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- 3.生命保険の経理・税務

目次
保険料の経理処理は、保険種類や保険期間、受取人により変わります。
本来は、解約払戻金の部分を資産計上すればよいのですが、実際には毎年解約払戻金は変わるなど煩雑となりますので、便宜的に簡易な方法をとっているものです。
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70歳を超え、契約年齢に保険期間の2倍を足したものが105を超えれば、2分の1損金になります。
ずっと2分の1損金ではなく、定期保険は最後に解約払戻金が0になる商品ですから、保険期間の60%相当期間を2分の1損金、残りの期間で資産計上したものを取り崩すという経理処理になります。
105ルールについて、具体的に計算してみましょう。
①は98歳定期保険について、損金区分が全額損金となるか2分の1損金の判定と、前払期間が何年かの計算です。
②は全額損金となるのは、保険期間が何年までかを計算するものです。
一般的な、死亡保険金受取人が法人となる場合において
①は定期保険は全額損金算入と定めているものです。定期保険は、保険期間中に解約払戻金がある場合がありますが、保険期間が満了すると解約払戻金はありませんから、全額損金とするものです。
②しかし、期間が長いものについては、解約払戻金の額が、全額損金とするには多すぎるものがあったため、②により、2分の1損金とする規定ができました。
③ただし、解約払戻金のない定期保険については、解約払戻金は無いわけですから、期間が長くても全額損金でよいとの規定も設けられています。
④これとは別に、逓増定期保険という、定期保険の一種ではあるのですが、保険金額が増えるタイプの保険については、長期平準定期以上に解約払戻金が多いため、別途のルールが定められています。
①②については105ルールといわれます。
契約年齢に保険期間の2倍を足したものが105までに収まれば、その保険料は全額損金とすることができます。
保険期間満了の時における被保険者の年齢が70歳を超えなければ、全額損金算入できます。
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例えば45歳の場合
①98歳定期
・損金区分の判定
45歳+(98歳-45歳)×2=151 ⇒ 105を超えるので2分の1損金
・前払期間(2分の1損金となる期間)
(98歳-45歳)×60%=31年(年未満切捨)
②全損の保険期間の計算
45歳+(保険期間×2)≦105
(105-45歳)÷2=30年
逓増定期保険は保険金額が最高で初年度の5倍に逓増する定期保険です。1件あたりの保険料が大きく1契約で1,000万円程度の保険料となる場合があります。
それだけ大きな額を損金算入し、税効果を出すことができるということです。そのため、税制変更が繰り返されてきました。5年から10年程度で解約払戻率がピークを迎えるという特徴があります。
仕訳、経理処理
仕訳の基礎は、①借方は左側、貸方は右側、覚え方は、借方は「かりかた」でかりは左、貸方は「かしかた」でかしは右。
②貸借は一致する。右と左は同じ額。
③借方は資産の増加、費用の発生。貸方は負債の増加、資本の増加、収益の発生。減少はそれぞれ反対側。
仕訳の例は、現金1,000万円で土地を買った場合。借方は土地を買って資産が増加し、貸方は現金が減って資産が減少したことを表しています。
金額は貸借で一致します。貸借対照表では現金は貸借対照表の左上にある。仕訳も同じこと。お金が入ってくるときは、仕訳の左側を現金にすれば、法人のお金が増える。逆に、仕訳の右側を現金にすれば、法人のお金が減る。
なんだか難しいと思った方のために、簡単な方法です。
生命保険の仕訳は、ほぼ現金がかかわりますので、現金が左右どちらにあるかで判断できます。
貸借対照表の左上は現金です。これは貸借対照表を見て頭に焼き付けてしまいます。
その上で、お金が入ってくるときは、仕訳の左側を現金にすれば、法人のお金が増える。逆に、仕訳の右側を現金にすれば、法人のお金が減る。ということを知っておけば左右を間違えることはありません。
すべて、法人にお金が入ってくるか、法人からお金が出て行くかからスタートする方法です。
1.法人が、定期保険の保険料1,000円を支払った。
保険金受取人法人
全額損金算入の場合の仕訳。
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保険料1,000円が法人から出て行ったということになりますので、現金または預金が貸方に来ます。定期保険の保険料は全額損金算入できるということですから、借方には定期保険料が来ます。金額はそれぞれ1,000円です。定期保険料は、損益計算書の販売費及び一般管理費となります。
2.法人が、終身保険の保険料1,000円を支払った。
保険金受取人法人
全額資産計上の場合の仕訳。
保険料1,000円が法人から出て行ったということになりますので、現金または預金が貸方に来ます。終身保険の保険料は全額資産計上ということですから、借方には保険料積立金が来ます。
金額はそれぞれ1,000円です。保険料積立金は、最終的に貸借対照表の固定資産の部の投資その他の資産となります。
3.法人が、定期保険の保険料1,000円を支払った。
保険金受取人法人
2分の1損金算入の場合の仕訳。
保険料1,000円が法人から出て行ったということになりますので、現金または預金が貸方に来ます。
定期保険の保険料は2分の1損金算入できるということですから、借方には定期保険料と前払保険料が来ます。
前払保険料は、2分の1損金の資産計上の際に用いる勘定科目です。
金額はそれぞれ500円です。前払保険料は、資産計上ですが、保険料積立金と異なり流動資産として扱われます。
4.法人が、解約払戻金100,000円を受け取った。
取り崩す保険料積立金が80,000円の場合の仕訳。
解約払戻金100,000円が法人に入ってきたということになりますので、現金または預金が借方に来ます。
その契約の解約により取り崩す保険料積立金が80,000円ということですから、貸借対処表の資産の部にあった保険料積立金は取り崩されて、貸方に来ます。
差額の20,000円については、80,000円の資産を取り崩して100,000円の現金を得たということですから、儲かったということで20,000円の収入です。
貸借のバランスにより貸方に雑収入です。雑収入は、営業外収益となります。
5.法人が、解約払戻金100,000円を受け取った。
取り崩す保険料積立金が120,000円の場合の仕訳。
解約払戻金100,000円が法人に入ってきたということになりますので、現金または預金が借方に来ます。その契約の解約により取り崩す保険料積立金が120,000円ということですから、貸借対処表の資産の部にあった保険料積立金は取り崩されて、貸方に来ます。
差額の20,000円については、120,000円の資産を取り崩して100,000円の現金を得たということですから、損したということで20,000円の損失です。貸借のバランスにより借方に雑損失です。雑損失は、営業外費用となります。
【関連知識】短期の前払費用
法人税基本通達2-2-14に短期の前払費用について定められています。生命保険に限った通達ではありません。
前払費用は、原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものです。
したがって、先ほどの例では11か月分は翌期に計上すべきということになります。
しかし、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った金額を継続してその事業年度の損金の額に算入しているときは、1その支払時点で損金の額に算入することが認められます。
年払い保険料は1年以内の保障に対するものですし、毎年継続して支払うものですから、3月の期末に1年分の保険料を支払ったとしても、全額損金算入とすることができます。
利益と課税所得(会計と税務の違い)
会計上の儲け・・・・・・・収益ー費用=利益
税務上の儲け・・・・・・・益金ー損金=課税所得
会計と税務は違います。
会計上の儲けは、収益から費用を引くことで、利益が生まれます。
税務上の儲けは、益金から損金を引くことで、課税所得となります。
この利益と課税所得は、それぞれ足すもの引くものがあり、異なる金額となります。損金不算入の例として、交際費や寄付金の限度超過額が上げられます。損金算入なのに益金不算入の例は、受取配当金、法人税の還付金など です。
<会社の利益計算>
利害関係者に対し経営成績と財務状態を明らかにするための情報の基盤。
<税金の計算>
課税のための基盤。公平さが要請される。
なぜ同じような数字を、わざわざ違う計算をして導き出すのかというと会社の利益計算は、利害関係者に対し経営成績と財務状態を明らかにするための情報の基盤であり税金の計算は、課税のための基盤であるため、公平さが要請されます。
つまり、目的が違うため違う計算をするということです。
【関連知識】実効税率
法人事業税は損金算入することができる税金のため、実効税率は法人税や住民税などを単純に足したものとは異なります。
法人税の復興増税は平成27年3月31日までの予定でしたが、1年前倒しで廃止されました。
地方法人税が創設され、平成26年10月1日以降の事業年度より適用となります。安倍政権は、20%台の法人減税を目指しています。
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