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- 4.企業会計の原則

目次
企業会計原則
企業会計においては、○○の原則といった言葉が出てくることがあります。
これは企業会計原則にある言葉ですが、その中でも生命保険とかかわりが深いものについて、わたしたち生命保険募集人が知っておくべき企業会計原則として学びたいと思います。
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企業会計原則は、企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から、一般に公正妥当と認められたところを要約した基準です。法律ではありませんが、企業が会計業務を実施する場合の基本的なルールとなっています。
かつては、企業会計の憲法のような存在でしたが、国際的に通用する会計基準へ変わっていく中で、その地位は低下しています。ただし、今日でも重要な原則として認識されているものです。
一般原則
・真実性の原則
・正規の簿記の原則
・資本取引・損益取引区分の原則
・明瞭性の原則
・継続性の原則
・保守主義の原則
・単一性の原則
・重要性の原則(一般原則ではないが、準ずる)
損益計算書原則
A.発生主義の原則 B.総額主義の原則 C.費用収益対応の原則
貸借対照表原則
A.資産・負債・資本の記載の基準 B.総額主義の原則
C.注記事項 D.繰延資産の計上 E.資産と負債・資本の平均
企業会計原則にはご覧のとおり、たくさんの原則がありますが、その中から生命保険と特に関わりがある、継続性の原則と、重要性の原則、発生主義の原則についてみてみましょう。
「そうだ!今期は厳しいけど、来期は儲かるのが見えているから、来期にまとめて損金で落とそう。」
今期は厳しいというのは、今期はなんとか黒字にするか、場合によっては赤字という状況です。毎年100万円の全額損金の保険料を落としています。
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今期については別に損金に落とさなくてもいい。赤字であれば損金で落とすと赤字を拡大するだけですから必要ない。
できれば好業績が予想される翌期に回して、損金を2年分の200万円にして、大きく節税したいというニーズです。
公共事業などを扱っている業種では、有り得る話ではないでしょうか。さて、これは企業会計原則に照らすと、どうでしょうか。
継続性の原則によると、「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない」とあります。
つまり、保険料の支払いという手続きについて、今年は赤字だからとか、黒字幅が大きいからといって、みだりに変更しては駄目であるとされています。これはよろしくないということがわかりました。
企業の仕訳例・・・で、
「大変だ。これまでずっと逓増定期の終身保険部分も損金にしてたらしい。前担当者が間違えたのかな。」
社長に怒られるかもしれないと、うなだれています。逓増定期保険については、逓増定期保険特約付終身保険という形で販売されることがよくありました。
その際、逓増定期保険特約の保険料は全額損金など逓増定期保険の規定に沿った仕訳をし、終身保険の保険料は全額資産計上というような仕訳をするというのが一般的です。
この仕訳例のように、現金100万円を支払った際に、99万円を定期保険料で損金として、1万円を保険料積立金で資産計上というわけです。
しかし、この保険料積立金とするべき1万円を含めて、全体100万円を損金にしていたと。
これは、企業会計原則に照らすとどうでしょうか。
重要性の原則によると、「企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで、他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。」とあります。
つまり、保険料100万円のうちの、保険料積立金1万円が利害関係者の判断を誤らせることはないということであれば、簡便に全額損金算入という処理も、正規のやり方として認められるということです。
ただし、これは生命保険会社や生命保険の募集人が判断することではありません。
あくまで社長が税理士などと相談して、決めることです。
「解約の際はいつ計上?解約日?解約払戻金着金日?」
解約の際は、解約請求書の受付日が解約日となりますが、解約払戻金はその日に受取るわけではなく、当社の場合ですとLPJ処理日の2営業日後に口座着金ですので、支社受付からはその日を含めて4営業日目の着金になります。
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この3月決算企業の場合、解約日が3月29日で解約払戻金の着金日が4月3日でした。今期か翌期のどちらで計上するかにより、会社の業績に大きく影響する可能性があるというわけです。これは企業会計原則に照らすとどうでしょうか。
発生主義の原則
「発生主義は、費用や収益を現金の収支に基づいて認識する現金主義に対し、収益や費用を発生させる経済価値の変動の事実に基づいて会計処理を行おうとするものである。」
「掛取引など現金を伴わない信用取引があった場合などに、正確な期間損益計算を実現するための基本原則である。」
つまり、お金の着金した4月3日ではなく、解約日の3月29日に計上しなさいということです。
そこで、発生主義と継続性の原則がぶつかる場面があります。
「保険料も発生主義」
解約払戻金が発生主義なのですから、保険料も発生主義になります。
こんなケースはどうでしょうか?
「生命保険の契約応当月が3月。そして3月決算の会社が3月中に保険料を支払わず、4月に保険料支払いました」
継続性の原則に反することがないよう、3月に「未払保険料」とするような経理処理をすることはできますでしょうか。これはできません。
3月に保険料を支払わなかったとしても債務は発生していませんし、実際に保険料を支払っていないのに、損金に落とすことができるとすれば、それはおかしいということです。
保険料も発生主義ですから、3月には何も経理処理せず、保険料払込猶予期間中に、実際に保険料を支払ったときに経理処理されます。
翌期に経理処理されるこの保険料は、どう処理されるのでしょうか?
期をまたいだ全額損金の保険料を、全額資産にするという決まりはありません。
もともと、前期3月末に年払いの保険料を支払ったとしても1年分の損金算入が認められるのは、短期前払費用の特例が適用されるからですが、それを翌期にその期の保険料をその期に支払うと見ることもできます。
つまり、翌期に支払ったとしても、全額損金算入とすることができる可能性があるということです。否認される可能性もあります。
発生主義と継続性の原則が、ぶつかってしまうところですが、こちらも私たちが判断するところではありませんので、ご注意ください。
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