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- Ⅵ.相続対策の実例, 相続・生前贈与
- 4.生前贈与を活用した相続税負担軽減対策

目次
生前贈与を活用した相続税負担軽減対策 (1)概要
① 基礎控除(受贈者一人あたり年間110万円)の活用
1年間に受けた贈与の額が基礎控除の110万円以下であれば、結果的に無税で財産を子や孫に移すことが出来ます。
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しかも、毎年贈与を続けることにより、無税で多額の財産移転が可能になり、相続税の負担も大幅に軽減する効果が期待できます。
② 基礎控除を超える贈与
たとえば年間200万円の贈与なら贈与税は9万円(実効税率4.5%)で済みます。資産を多くお持ちの場合、相続税率は55%が適用されることもあるので、ある程度まとまった金額での贈与もトータルで見ると有効といえます。
生前贈与は、通常直系の子や孫に行います。贈与は年間110万円の基礎控除を活用するのが有効です。
基礎控除は1年間分(1月1日~12月31日)の贈与に対してですが、贈与期間を1年(365日)あける必要はありません。
たとえば、12月25日に110万円の贈与を行い、年があけた1月5日などに110万円の贈与を行っても、220万円非課税となります。財産が3億以上ある場合は、110万円に拘らず贈与金額を300万円・500万円とあげて贈与するのも有効といわれています。
ちなみに、500万円贈与しても税金は49万円です。約1割の税負担で贈与が可能です。相続税で2~3割税負担がある場合の方は、基礎控除を超えた贈与も有効といえます。
③ 贈与の事実を明確にするためのポイント
(イ) 贈与税の申告と納税を行う
(ロ) 贈与契約書を作成する
(ハ) 金銭を贈与したことを預金通帳で明らかにしておく
(ニ) 受贈者が預金通帳・印鑑を保管する
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生前贈与を行った場合は、証拠を残すことが重要です。せっかくの生前贈与も証拠がない場合は、認められないケースがありますので、贈与の事実を明確にするためのポイントをおさえて生前贈与を行う必要があります。
★何年間もかけて財産を生前贈与したとしても、贈与の事実が明らかになっていなかったために 税務当局から「贈与」と認定されなかったケースもあります。
★毎年同じ日に同じ金額を定期的に贈与した場合には、『定期贈与(連年贈与)』と判断され、1年ごとの贈与税の計算ではなく、初年度に定期金に関する権利の贈与があったものとみなされ、贈与金額の総額をベースとした課税となるおそれがあります。
④ 生前贈与を使った相続税対策と生命保険活用
■ 贈与した現金を安心して管理
■ 死亡保険金でも契約形態が『契約者=受取人(孫)』の場合、一時所得として課税
■ 受け取った保険金は納税資金や代償分割資金としての活用も可能
■ 受贈者が保険契約者に自署することにより、贈与の事実を明らかにできる
贈与を現金で行ってしまうと、受贈者が無駄使いをしてしまう恐れがあります。そこで生命保険を活用します。
贈与した現金を保険料に充てることにより、無駄使いをするヒマもないため、生前贈与と生命保険はセットで考えるのが一般的です。
(2) 生前贈与を活用した相続税対策の留意点
① 相続開始前に引き出された現金の取扱い
1.現金の引き出しが相続の直前ではなく数年前だった場合を予想してみてください
2.現金の引き出しが相続の直前でも数年前でもなく、10年以上前だった場合はどうなるでしょうか
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上記のケースは、引き出しされたのが何年前かによって指摘される内容が違うといわれています。
⇒ 2~3年前に引き出した場合。
4,000万円の現金を引き出した場合、まだ4,000万円全部は使ってだろうという考えで手持ち現金として相続税課税するか、現金を引き出した人への贈与として課税するケースの2通りが考えられるといわれています。
贈与として課税となっても、3年以内の贈与は、相続財産として計算しますので、結果的には相続税の課税となります。
⇒ 6~7年前に引き出した場合。
4,000万円の現金を6~7年前に引き出した場合、もう現金は使いきっているであろうという考えで贈与税の追徴課税を指摘されるケースが考えられるといわれています。
⇒ 8年以上前に引き出した場合。
贈与税の時効は基本は5年です。ただし、贈与と知っていたにもかかわらず、申告しなかった場合など悪質な場合は7年の時効のケースが多いです。
仮に時効が7年としても、8年以上前に引き出した現金を贈与税としては課税できないと考えられますので、子どもへの貸付金として相続税の追徴課税を行うケースがあるといわれております。
② 妻名義のヘソクリがその管理状況及び原資等から相続財産であると認定した事例
■ Aさんは、昭和48年10月8日に亡くなりました。
■ 直前の10月3日・4日・5日・6日と各日1,000万円で合計を普通預金口座から引き出していました。(銀行員が自宅に持参払いしています)
↓
死亡直前の状況より資産取得、債務返済、その他支出された事実が認められず当該現金は、相続開始時にそのまま残っていたと考えられるので、4,000万円は相続開始時の手持現金と認定した。
請求人は、本件預貯金等のうち、「妻名義のもの」は、妻が被相続人との婚姻前から保有していた預貯金及び妻固有の収入並びに「生活費を節約して貯めたヘソクリ」を原資として形成されたものである、また、一部のものについては被相続人から生前に贈与を受けたものである旨主張する。
しかしながら、本件預貯金等のうち妻及び子名義の郵便貯金の一部については、「郵便貯金メモ」等により「被相続人が管理」しており、被相続人がその処分権を有していたと認められること、本件預貯金等のうち以外の預貯金等についても原資は被相続人が出捐したものであり、その管理も被相続人により行われていたと認められること、贈与されたと主張する預貯金等の管理運用は被相続人が行っており、贈与の事実は認められないこと等から判断すると本件預貯金等は相続財産であると認めるのが相当であり、請求人らの主張は採用できない。
このケースは「ヘソクリ」と回答したのが対応上問題だったといわれております。贈与というのは、「あげる側ともらう側の契約に基づき成立する契約」です。
ヘソクリは、あげる側の合意をとっていないので贈与としては成立しないといわれてしまうケースがあります。
端的にいうと、もらう側があげる側に内緒で貯めたお金と見られてしまうかもしれません。そのため、相続財産と認定されてしまいました。
【注意点】
(1)生命保険は「一定期間、一定金額保険料を支払う」という特徴がありますが、このことをもって、生命保険料への充当を前提にした贈与が「定期一括贈与」とみなされる可能性はないのでしょうか?
⇒ 保険事故がいつ発生するかわからない(期間が定まっていない)ため、贈与されたお金をそのまま 生命保険の保険料に充てている場合には、定期贈与には当てはまらないといわれています。ただし、絶対ではないので贈与時の注意点を踏まえて贈与を行う必要があります。
(2)親子間の贈与で子が未成年だった場合、贈与者が親、受贈者の親権者として贈与契約書に署名するのも親となりますが、問題はないのでしょうか?
⇒ 問題はありませんが、出来れば「父から子」に贈与した場合は、受贈者の親権者として署名するのは母の方がいいといわれています。「母から子」に贈与した場合は、親権者署名は父となります。
(3)毎年同じ日に、同じ金額を贈与することは避けたほうがよいと言われているが本当でしょうか?
⇒ 贈与されたお金を保険料に充てない場合は、定期贈与と指摘されるケースがあるといわれています。そのため、保険料に充てない場合は、日にちor金額を変更して贈与した方がいいといわれています。
(4)110万円を超える金額を贈与して毎年贈与税を納付しておくと効果的と言われているが、本当でしょうか?
⇒ 効果的といわれています。理由は、納税したという証拠が増えるためです。ただし、贈与する際は、贈与契約書を作成するなどの基本的なポイントをおさえておく必要があります。
(5)贈与資金を生活口座とは別に管理すると名義預金とみなされる可能性があると言われていますが、本当でしょうか?
⇒ 入金だけされている口座は不自然とみなされる場合があるといわれるケースがあります。
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