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保険各社がデジタル技術による業務の見直しに動いている。
人工知能(AI)を使う技術や事務処理のシステムが進化し、契約書類を作成する手作業などを代替できるようになったためだ。
伸び悩む国内市場でマイナス金利による運用難が重なり、収益確保のために事務の効率化を迫られている。
余裕ができた人材は商品開発や営業にまわし、収益力を再構築する。
生損保各社は国内の経営環境が厳しくなっている。
生保は低金利で運用収益が上がりにくく、4月には主力商品の保険料を引き上げた。
損保は若者の車離れなどから、正味収入保険料の6割近くを占める自動車保険関連の契約が伸び悩むと想定される。
人手に頼る事務作業のコスト削減が急務だ。
金融業界ではメガバンクが人員や店舗の削減など大規模なリストラ計画を発表している。
生損保各社の顧客窓口は代理店や営業職員が主力。
拠点の余剰感は少ないが、本社や地域拠点で手掛ける事務作業は膨大だ。
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損保ではMS&ADインシュアランスグループホールディングス(HD)傘下の三井住友海上火災保険が営業部門の事務の9割、あいおいニッセイ同和損害保険が6割を削減する。
グループ全体の業務量は2021年度までに2割減らす。
両社のシステム統合による事務の共通化も寄与する。
細る収益源を補うには、新たな保険商品の柱が必要だ。
東京海上HDはサイバー攻撃に対する保険など新規分野の人員を増強する。
人材を確保するため、デジタル技術を使って全業務量の2~3割削減を目指す。
SOMPOHDも契約や支払業務を一部自動化し、介護事業などを強化する。
生保業界では、顧客の高齢化に伴う契約確認業務の増加が悩みだ。
保険金を適切に支払うには営業職員による訪問が欠かせない。
全国に約23万人いる営業職員を支援する上でも業務は効率よく済ませ、顧客との接点を保たなければならない。
力を入れるのが「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」と呼ぶソフトを活用した効率化だ。
日本生命保険は30年度までに事務量を現在より15%減らす。すでに約1500億円を投じ、営業事務のシステムを刷新。
全国約1500カ所の営業拠点の事務を100支社に集約した。
RPAに任せる業務も来春までに16から26業務に増やす。
第一生命HDは18年春、間接部門の社員の再配置に乗り出す。
17年10月からRPAを導入し、約150人分の業務を置き換えるメドをつけた。
明治安田生命保険は今年、団体保険事務に関わる新システムを稼働。
書類手続きなどを電子化し帳票を4分の1に削減する。
住友生命保険は来夏にも営業職員に新型タブレット4万台を配布、事務量を約15%減らす。
(日本経済新聞 2017/12/29)
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