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銀行による保険や投資信託の窓口販売が曲がり角にさしかかっている。
保険窓販は銀行大手5グループの合計販売額が2017年度に前の年度に比べ1割減り、10年度以降で最低水準に落ち込んだ。
超低金利の下、窓販拡大を支えてきた貯蓄性商品の供給減が響いたほか投信もかつての勢いを失っている。
窓口の販売手数料は銀行にとって大きな収益源のひとつで影響は小さくない。
三菱UFJ、三井住友、みずほ、りそな、三井住友信託の販売額を集計した。
17年度は1兆2591億円と、16年度比で10%減った。37%減と急ブレーキがかかった16年度から一段と落ち込み、不振が続いた。
コンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)やふくおかFGなどの上位地方銀行10行・グループでも合計額が1%減った。
低迷の要因は「一時払い終身保険」に代表される貯蓄性商品が相次いで販売停止になったこと。
数百万~1千万円程度の保険料を一括で払い込み、10年前後で解約すると保険料を上回る返戻金を受け取ることができる。
預金金利がゼロ近辺に下がるなか、中高年を中心に退職金の運用先として人気だった。
ただ日銀のマイナス金利政策で金利低下に拍車がかかり、一定の運用利回りを約束する貯蓄性保険の採算が悪化。
商品の設計・運用ができなくなった。
日本生命保険や第一生命保険系列の保険会社が16年から相次ぎ販売を中止。
「現状の金利水準では魅力的な商品の供給が難しい」(第一生命ホールディングスの畑中秀夫・常務執行役員)と再開のめどはたっていない。
貯蓄性商品に傾斜していた大手銀行は売りたくても売る保険が乏しい状況で、打撃は大きい。
保険や投信の販売などで得られる「役務取引等利益」は5大銀行グループで計1兆786億円となり、16年度から微減だった。
業務粗利益に占める割合は平均で19%弱。貸出金や有価証券の運用による収益が長引く低金利で振るわず、保険や投信など販売手数料の底上げが課題となっている。
貯蓄性商品がしばらく復活しないと想定し、反転攻勢に出る銀行もある。
三井住友信託は4月、仏系カーディフ生命保険の現地法人化に伴い、20%を出資。割安な医療保険やがん保険を共同で開発し、夏ごろに店頭で販売する計画を描く。
地銀勢は、静岡銀行や千葉銀行が全国で保険ショップを営む「ほけんの窓口グループ」と提携。保障性商品を充実させた共同店舗を増やし医療保険などに活路を求める。
(日本経済新聞 2018/05/25)