
2018年度、国内生命保険会社によるドル買いは低調に。
市場関係者の間で、こんな見方が強まっている。
スポンサーリンク
これまで利回りを求めて外債投資に活路を見いだしてきたが、足元は為替変動リスクが高まり妙味が薄れる。
代わって注目されるのが日本国債。
ここに投資マネーが向かえば、さらに円高に振れやすい状況も生まれそうだ。
新年度相場を前に、国内生保が運用計画をまとめている。
もともと生保は顧客と長期の保険契約を結ぶため、リスクを抑えた投資が中心だ。
ところが、2年前に日銀がマイナス金利を導入。
国内金利が急低下し、運用難から少しでも高い利回りを求めて外国債券へ投資マネーを振り向けるようになった。
それが変調の兆しを見せている。
ある生保は為替変動リスクを取りながら円売り・ドル買いで外債投資を進めてきたが、足元では円高が加速し、将来の運用収益の目減りを懸念する。
「正直に言うと、これ以上の為替リスクは取りたくない」。
同社の幹部はこう本音を明かす。
財務省の対外証券投資によると、生保は2月に海外の中長期債を2000億円ほど売り越した。
マイナス金利が導入された16年は1カ月で1兆~2兆円ほど買い越すことも珍しくなかったが、足元にかけて以前ほどの盛り上がりはない。
新年度も国内生保は為替リスクを取ったり、外国社債に投資したりして少しでも高いリターンを求めようとはするだろう。
しかし「社債は国債に比べると投資分析に手間がかかりがちで投資マネーの受け皿となるほどの規模もない」(大手生保関係者)という。
選択肢として浮かんでくるのが日本国債だ。
国内生保が目安とする利回りは1%程度。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊氏は「足元の政治リスクが和らげば、日銀が金融機関の収益に配慮するとの見方から金利上昇圧力が高まりやすい」と指摘する。
新年度に想定する利回りの上限は30年債で0.9%、40年債で1%前後という。
金利が上向けば、国内生保は投資マネーを日本国債に振り向けやすくなる。
その分だけ、円売り・ドル買いを伴った外債投資は減り、円安圧力は弱まる可能性が高い。
日米金利差が広がると円安・ドル高に振れるのが円相場の定石。
現在はこの相関が薄らぎ、何が指標になるのかもわかりにくい状況だが、新年度の円相場を読む上では、日本国債の動きにも目配りしたい。
(日本経済新聞 2018/03/29)