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生命保険各社で、定年を見直す動きが加速している。
日本生命保険や明治安田生命保険が現在の60歳から65歳に引き上げるほか、一定の年齢で管理職から外れる「役職定年」の制度をやめる金融機関も増えている。
入社年次や年齢で画一的に管理する人事制度から脱し、働く意欲と能力の高いシニア人材を活用して将来の人材不足に備える。
「ベテランの皆様に引き続きご活躍いただかなければ、会社は競争力を失っていきます」。
日本生命は今夏、2018年度末に定年を迎える社員向けの研修を開いた。
東京と大阪で集まった約280人に対して、人材開発部の担当者は「会社はベテラン世代に高い関心、期待を持っている」と熱を込めて訴えた。
日本生命は21年度をめどに社員1万5千人を対象に、定年を60歳から65歳に引き上げる方向で労働組合と協議を進めている。
1980年代後半から90年代初めにかけてのバブル期入社組は現在、大半が50代だ。
近い将来、彼らが一斉に定年を迎えて総合職を離れると、業務を支えきれなくなる恐れがある。
日生は将来を見据えて18年度から60歳以上の社員を「エルダー職員」と名付け、研修を充実させてきた。
60歳を超えても競争環境を維持し、「頑張れるエルダーを処遇する」(関係者)ことで人材不足を補い、生産性を高める狙いだ。
高齢になるほど体力や意欲に個人差が出やすいが、給料も働きに応じてメリハリをつけ、現役並みに働けるエルダーを増やす。
明治安田生命も19年度に定年を65歳に引き上げる。
運用部門や法人営業などでノウハウを生かしてもらう。
「場当たり的に新人の採用を増減させるより、元気で経験の豊富な人に長く働いてもらう仕組みの方が合理的」(首脳)との判断だ。
現場の主要な部署でシニアを活用する動きも広がっている。
その一つが一定の年齢になると管理職から外れて、取引先などに出向する役職定年の見直しだ。
太陽生命保険は昨年4月、57歳と定めていた役職定年を取りやめ、定年も延長した。
その結果、一度は管理職を離れた60歳の課長が誕生。
システム分野で培った専門的な経験が評価された。
もっとも、シニアの活用は、世代交代という新陳代謝が進まない副作用と隣り合わせだ。
優秀な若手が要職につきにくくなる恐れもあるが、太陽生命は「年功序列をやめ、60代と30代が当たり前に競争する環境をつくる」という。
(日本経済新聞 2018/11/28)