
国内の超低金利環境にもかかわらず、主な生命保険会社の業績が堅調だ。
高めの収益が見込める海外運用を積極的に進めてきたことが、ひとまず奏功している。
だが、海外投資への傾斜は、予期せぬ為替変動による損失発生の可能性を高め、今後は為替差損を回避する取引などリスク管理の巧拙が問われる。
保険の契約者が直接負っている為替リスクについても、説明を徹底すべきだ。
主要生保16グループの2018年3月期決算は、期間損益を示す基礎利益が13グループで増加した。
投資先からの株式配当が増えたほか、為替相場が円安水準で推移し、過去に購入した外債の利息や償還益が上振れした。
資金運用と並ぶ生保経営の両輪である保険販売でも、外貨で運用する商品が貢献した。
なかでも直近3年間の累計で100万件を突破した売れ筋が「外貨建て一時払い終身」と呼ばれる定額保険だ。主に銀行窓口で取り扱う。
米ドルや豪ドルといった外貨運用だと、円建てに比べて利回りが高く設定されるため魅力的に映る。
国内の低金利を踏まえれば、外国資産に分散投資するのは資産形成の選択肢の一つだ。生保商品には税制面の優遇措置もある。
ただし、保険金額が事前に決まっている「定額保険」といっても保証されるのはあくまで外貨での受取額である点に注意が必要だ。
為替が円高に振れると、円に戻す際に元本割れするおそれがある。
運用開始前に差し引かれる手数料の水準を含め、契約者への丁寧なリスク開示が欠かせない。
保険料が最初に一括で払い込まれる一時払い型は銀行にとって売りやすい。
契約者の健康状態の確認手続きが簡便で、80歳を超えていても新規に加入できる。
だが、果たして外貨建て保険の複雑な仕組みとリスクを高齢者にどこまで理解してもらえるのか。
国民生活センターには苦情や問い合わせが増えている。
(日本経済新聞 2018/06/10)