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日本生命保険がM&Aにひた走っている。
2日に米系マスミューチュアル生命保険の買収を発表したのに続き、7日にはドイツ銀行系の資産運用会社に出資することが明らかになった。
三井生命保険の買収をはじめ筒井義信社長が就任後に投じたM&A資金は8000億円規模に達する。
逆風が吹きつける中、巨額投資で生保業界での“ガリバー”復権を急ぐ。
日生はドイツ銀系のDWSが近く予定する株式売り出しに際し、一部を取得する。
出資比率は10%未満だが、出資額は数百億円に上る見通し。
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マスミューチュアルの買収発表から1週間とおかず、新たな投資が明らかになった。
「我々の戦略はこれで終わりではない」。
マスミューチュアル買収について日生の三笠裕司常務執行役員は2日の記者会見でこう断言したばかり。
生保関係者は「(外資系大手の)メットライフ生命保険すら買おうとしているのでは」と戦々恐々だ。
マスミューチュアルとの買収協議は2016年7月に遡る。
米国の親会社からの打診を受け、実務協議から始めた。
15年末に三井生命を子会社化したばかりだった日生にとり、マスミューチュアルは最初から買収リストの最上位にあったわけではない。
銀行窓口での保険販売などマスミューチュアルの強みを見定めると、協議を加速。
17年秋の協議本格化から半年ほどで買収にこぎつけた。
窓販と並んで日生がM&Aの重点分野にするのが資産運用だ。
筒井氏の社長就任後、グループのニッセイアセットマネジメントを三井住友トラスト・ホールディングス傘下の日興アセットマネジメントと統合させる案を検討したこともある。
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7日明らかになったDWSへの出資は、昨年末に出資を決めた米資産運用大手TCWと同時進行で検討していた案件だ。
日生がこれほど矢継ぎ早にM&Aを手掛けるのは異例だ。
戦後一貫して最大手として業界に君臨。他社との踏み込んだ提携に消極的だったうえ、バブル崩壊や00年代の生保危機を経て大型投資に一段と慎重になった。
守りを固める姿勢を一変させたのが11年に社長に就いた筒井氏だ。
「足りないパーツを(出資や買収で)補い、ウイングを広げる」と公言し、攻めを強めるよう社内に訴えた。
15年にはM&Aなどに今後10年間で最大1兆5000億円を投じると表明し、同業他社を驚かせた。
日生を取り巻く経営環境は厳しさを増す。
日銀のマイナス金利政策の下、国債での運用が厳しい状況が続き、経営体力をじわじわ奪う。
ライバルの攻勢も続く。
第一生命ホールディングスは10年、大手生保で初めて相互会社から株式会社に転換、上場した。
14年には米保険大手プロテクティブの買収を決め、15年3月期決算には売上高にあたる保険料等収入で日生を一度逆転した。
17年3月期で第一は連結純利益の3割強を海外事業や窓販で稼いだ。
株式会社化で得た機動力を生かし、収益構造の転換で先を行く。
日生は三井生命との人材交流や相互の商品供給でノウハウ共有を急ぐ。
米国マスミューチュアルは統合後も株式の14・9%を保有し「国内外で協業の可能性を模索する」(統括子会社のエディ・アーメッド最高経営責任者)として、日生と海外事業でも連携する可能性を示唆する。
買収先と早期に相乗効果を出せるかどうかに巨艦・日生の相次ぐ買収の成否はかかる。
(日本経済新聞 2018/03/08)
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