
医療費の自己負担に上限を設ける高額療養費制度。
医療の高度化で、年齢を重ねるほど1人当たりの医療費はかさむ。
現役世代との負担をなるべく公平化するため、70歳以上の高所得者の負担をさらに増やすしくみに変わった。
「ここまで複雑な計算式になると、上限額がすぐに計算できない。高齢者はなおさらだよ」。
都内で診療所を営む60代の医師は、1日からの制度変更を説明するリーフレットを見ながら困惑の色を隠さない。
これまで自己負担の上限額が一律だった70歳以上の「現役世代並み所得者」は、課税所得で3つに区分された。
「690万円以上」「380万~690万円」「145万~380万円」だ。それぞれで上限額の計算方法は異なる。
690万円以上の場合、月あたりの上限額は「25万2600円+(医療費―84万2000円)×1%」で算出。8月の診療分から切り替わる。
これに従うと、1カ月に100万円の医療費がかかると、自己負担額は25万円を超える。変更前は約8万7千円なので、17万円ほど負担が増える。
高額療養費制度は医療機関や薬局の窓口で支払った額が1カ月で上限額を超えた場合、超えた金額を公的医療保険から支給するしくみだ。
医療は介護に比べ、高度ながん治療など莫大な金額が必要になることもある。自己負担に上限があれば利用者の安心につながる。
(日本経済新聞 2018/08/03)