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外貨建て保険の勢いが止まらない。
業界推計によると、契約時に一定額をまとめて支払う「一時払い」型の商品で、2018年4~9月期に銀行や証券会社の窓口で販売した外貨建て保険の販売額は前年同期比34%増の1兆9500億円規模。窓販での一時払い保険の販売額の9割近くを占めた。販売増に伴い苦情も増えており、金融庁は保険会社に顧客への商品説明を徹底するよう注意喚起している。
人気の背景にあるのは、日銀のマイナス金利政策に伴う超低金利環境の継続だ。円建て保険では利回りを確保できなくなり、商品の販売停止が相次いだ。そんな中、比較的高い利回りをとりやすい外貨建て保険に人気が集まっている。
外貨建ての好調は各社の決算でも顕著に表れた。
18年4~9月期は、売上高を示す保険料等収入で主要生保16グループのうち12社が増収を確保。いずれも外貨建て保険がけん引した。
なかでもいち早く外貨建て保険の商品数を増やしてきた第一生命ホールディングスは銀行窓販向けの商品を扱う第一フロンティア生命保険が好調。同社の保険料等収入は43%増と大幅に伸び、HD全体の売り上げに貢献した。
円建て保険の販売額は18%減の2800億円と、引き続き低調だった。
日本生命保険が8月から三菱UFJ銀行や一部の地方銀行で順次、円建て保険の扱いを再開。明治安田生命保険も円建ての一時払い終身保険で、契約時に約束する利回り「予定利率」を0.05%引き上げた。根強い需要を受け、商品販売を再開する動きは出始めているものの、大きな流れにはなっていない。
今後も外貨建て保険の好調は続きそうだ。10月に外貨建ての商品をリニューアルした日本生命は、発売から2カ月で同商品の保険料等収入が780億円と、上半期実績を上回ったという。
住友生命保険も8月から買収した米シメトラ社のノウハウを活用した外貨建て一時払い個人年金を発売。MS&ADインシュアランスグループホールディングスの三井住友海上プライマリー生命保険も11月に新商品を投入した。
ただ外貨建て保険には慎重な見方も根強い。
外貨建て保険を扱っていない富国生命保険の桜井祐記取締役は「顧客へのリスク説明など、取り扱うには相当なノウハウや準備が必要になる」と指摘する。
実際、窓口での取り扱いが増えるのに伴い苦情も増えている。国民生活センターに寄せられた報告では、預金と思って契約したら外貨建ての生命保険に加入していたケースなどもあったという。改めて顧客説明の徹底を求められている。
生命保険協会ではこうした状況を踏まえ、全国銀行協会と共同でアンケートや苦情分析などに取り組んでいる。だが外貨建て保険は外貨預金などと比べても商品性がわかりづらく、今の対応では不十分との見方もある。金融庁も意見交換会などの機会を通じ、生保各社に強く対応を求めている。
(日経ヴェリタス 2018/12/09)