生保、外債運用に活路、前期、第一生命など13グループ増益
- 2018/5/31
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- 2018年3月期決算

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国内の主な生命保険会社16グループの2018年3月期決算が25日、出そろった。
マイナス金利政策による運用難の逆風が吹くなか、徐々に外債に運用先を振り向けてきたことなどが奏功し、13グループが増益を確保した。
半面、売上高にあたる保険料等収入は、主力の円建ての貯蓄性商品の販売停止が続いており、代替となる商品の有無が明暗を分けた。
第一生命ホールディングスと明治安田生命保険、富国生命保険の3社は、本業のもうけを示す基礎利益で過去最高益を更新した。
投資先企業の業績改善で配当収入が好調だったことに加え、「海外の債券などに機動的に資産配分したことや(買収したスタンコープ社がある)米国の好調な経済環境が寄与した」(明治安田の荒谷雅夫専務執行役)。
明治安田は前の期比18%増の5851億円で、3期ぶりに第一生命HDを上回った。
国内金利が低位で推移するなかで、各社は償還期限を迎えた国債などを少しずつ外債に振り向けてきた。特に対ユーロで円安が進んだことなどが利益に貢献した。
日本経済新聞社が外資系を除く日本生命保険など10社に実施した運用方針アンケートでは、17年度の国債投資額の合計は16年度比約2兆8000億円減少した一方で、外債の投資額は約4兆円増加した。
第一生命HDなど一部生保では買収先が米国の法人減税の影響を受け、特別利益を計上した。
一方、明暗を分けたのが保険料等収入だ。日生など9社が増収となったが、住友生命保険など7社は減収。
多くの生保が国債の運用難で「一時払い終身保険」に代表される円建ての貯蓄性商品の販売が再開できない状況が続く。代替となる商品の有無が結果を分けた。
日生は買収した三井生命保険の外貨建て保険を17年度から日生の営業職員経由で販売。保障額が大きい経営者向け保険も好調で、4%の増収だった。
第一生命HDも国内のグループ会社が扱う外貨建て保険や経営者向け保険を中核子会社で販売、増収を確保した。
一方「(為替リスクの有無など)顧客の誤解を生む可能性がある」(桜井祐記取締役)との考えから外貨建て保険を扱わない富国は、基礎利益が過去最高益だったにもかかわらず、8%の減収となった。
銀行窓口での貯蓄性商品の販売に強みを持つ三井住友海上プライマリー生命保険なども、売り止めの影響で減収となった。
住友生命は前年同期に他社よりも利率の高い個人年金の販売が急増した反動で、大手4生保で唯一減収となった。
19年3月期の業績は不透明な市況環境が続くことや、円安などの利益押し上げ要因がなくなるとの判断から慎重な見通しが多い。
日生も「結果的に決算数字は良かったが、経営の先行きが見通しづらい環境だ」(三笠裕司取締役)と減収減益を見込む。第一生命HDや住友生命も減益を見込む。
長期の保険契約と長期投資を基本とする生保は、マイナス金利政策による運用難の影響が償還期限を迎えた債券の入れ替えなどで「ボディーブローのように効いてくる」(大手生保幹部)。
長らく生保はメガバンクや大手損保に比べて海外展開に慎重だった。だが近年は長引く低金利や国内市場の将来的な縮小に備え、国内外での出資や買収が相次ぐ。
出資先への運用資産の委託などを通じて相乗効果を高め、グループ全体で収益源を多角化し、円安や法人減税という「追い風」がなくとも稼ぐ力を持続的に高める取り組みが必要になりそうだ。
主要生保16グループの2018年3月期決算
〓〓 単位億円、カッコ内は前の期比増減率%、▲はマイナス、かんぽは参考値 〓〓
保険料等収入 基礎利益
日 本 54,220( 4) 7,227( 5)
第 一 48,845( 9) 5,738( 9)
明治安田 30,243( 6) 5,851( 18)
住 友 26,887(▲22) 3,636( 9)
プルデンシャル 21,968( 3) 1,969( 17)
メットライフ 17,867(▲22) 1,324( 20)
MS&AD 15,532( ▲1) 216(▲70)
T&D 14,837( ▲1) 1,484( ▲7)
アフラック 14,439( 0) 2,753( 6)
ソニー 10,592( 11) 813( ▲3)
東京海上日動あんしん 9,081( 5) 305( 37)
富 国 5,971( ▲8) 984( 8)
アクサ 5,966( ▲4) 537( 51)
損保ジャパン日本興亜ひまわり 4,384( 5) 175( 6)
朝 日 3,849( 0) 301( 37)
マスミューチュアル 2,335(▲28) 296( 25)
かんぽ 42,364(▲16) 3,861( ▲1)
(日本経済新聞 2018/05/26)