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ライフネット生命保険が開業10年目を迎えた。
生保のネット販売をはじめ、業界の常識への挑戦を続けてきた「異端児」。
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だが、最近の売り上げは振るわず、「ネット生保は限界」との声もある。
6月にはアイデアマンの創業者・出口治明氏(69)が会長を退任。新経営陣は「らしさ」を保って反転攻勢を図れるか。
「がん保険は世の中にあふれているが、『働きながら治す』という風土をつくりたい」。
7月末、ライフネットが開いたファイナンシャルプランナー向けの新商品説明会。
岩瀬大輔社長(41)は、競争の激しいがん保険に参入した意図を語った。
がんと診断され、治療が終わった後も、最長で5年間給付が続き、収入減少への備えを手厚くした。
家事代行やタクシー会社、抗がん剤の副作用のケアを行う企業も紹介する、
保険を売るだけでないところが、ライフネットの「らしさ」なのだと強調する。
ライフネットは、6月に会長を退任した出口氏が創業し、2008年に営業を始めた。
出口氏は日本生命保険出身。ネット販売による割安な保険料を売りに新規参入した。
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「カエルがどんなにおなかを膨らませたところで、大きな牛にはかなわない」。
出口氏はイソップ童話を引き、ライフネットの歩みを例える。
昨年度末の保有契約数は約24万件。
日本生命の1%未満だ。
大手にはアイデアで勝負するしかない、と様々な取り組みを打ち出してきた。
生保業界では、女性営業員らによる対面販売が今なお主流だ。
営業職員は業界全体で約23万人いるとされる。
ライフネットはネット専業でコストを抑え、新契約数は開業4年目の11年度は6万件超と、当初の10倍超に伸ばした。
透明性を高めるため、保険料のうち、会社の利益につながる付加部分の開示にも踏み切った。
しかし11年度を境にその勢いは落ちている。
16年度は5期ぶりに前年度比で反転したものの、ピーク時の半分に満たない3万件弱にとどまる。
保険は「もしも」に備えるものだけに、丁寧な説明を聞きたいという求めも根強い。
生保関係者は「生命保険は『待ち』の攻勢では入ってもらえない商品だ」という。
自ら積極的に営業して顧客のニーズを掘り起こす必要があり、ネットで申込を待つスタイルは「限界がある」と指摘する。
ライフネットが新たに売り出したがん保険についても、業界では、すでに多くの商品がある中で、独自性を出すのは難しいとの見方がある。
しかし出口氏は、「ネット生保はまだ青天井に伸びる」と予測する。
現在、ネット生保の市場規模は200億~300億とされ、業界全体の約33兆円(16年度)と比べれはのびしろは大きいとの見立てだ。
生保会社は初期投資に大きな費用が架かることもあり、当初は赤字が続く傾向がある。
ライフネットも開業から赤字が続いてきたが、18年度には初の黒字化をめざしている。
(朝日新聞 2017/08/23)
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