
住信SBIネット銀行などインターネット専業の銀行が「脱ネット」へ動き始めた。
コストを徹底して抑えることで金利面の競争力を高めてきたが、マイナス金利やネット市場の飽和に伴い、リアルへの進出で新規顧客を開拓せざるをえなくなっている。メガバンクなどは逆にネット市場に力を入れており、ネットとリアルの境界領域で激しいシェア競争が巻き起こりそうだ。
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東京・西新宿にある住信SBIの「新宿ローンプラザ」。銀行代理業のグッドモーゲージが運営し住信SBIの住宅ローンだけを扱う専売店で、住信SBIにとって初めての「リアル店舗」だ。
開業から1カ月半で約330組が住宅ローン相談に訪れ、申込数は190件を超えた。住宅ローンは必要書類や手続き、返済への不安などから対面で相談したいというニーズが高い。
「こんなに安くなるんですよ」。東京・新宿の駅前にあるKDDIの直営店。スマートフォンの修理を待つ顧客にauショップの定員が語りかける。ネット専業のじぶん銀行も2月から新宿と大阪のKDDIの直営店で住宅ローンの取り扱いを始めた。
約1カ月で200人超に住宅ローンを紹介し、数十人の顧客にシミュレーションをして借り換えのメリットを訴えた。
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ソニー銀行の場合はソニー生命保険を経由した住宅ローンの取り扱いが増えている。16年の年間の住宅ローン申込件数は前年比で1.3倍に達したが、ライフプランナーと呼ぶ販売職員経由は倍増したという。
ソニー銀行、楽天銀行なども含むネット銀6行の預金残高は2016年3月末時点で11兆4000億円を超えた。とはいえ全国の銀行に占める割合はわずか1.42%にとどまり、成長の大きな岐路に立たされている。
住宅ローンはマイナス金利のあおりで大手銀の金利も底に張り付き、ネット銀への逆風は強まっている。預金金利もコスト削減が限界の壁に近づいたことでこれ以上、大手銀などと差別化するのが難しい状況だ。
脱ネット依存の動きは生命保険にも広がる。ライフネット生命保険は加入などに必要な手続きがネット上で済むといった簡便さが支持を集めてきたが、15年度の新契約は4年前のピーク時から4割程度に減少した。
原点であるネット直販だけでなく、対面代理店をもう一つの柱に据える事業モデルへカジを切り、販路の多様化を進めている。
ネットを基本に据えつつリアルに成長の活路を見いだせるかどうかは、ネット金融の死活問題といっても言い過ぎではないようだ。
(日本経済新聞 2017/03/24)
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