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保険会社がグローバル人材の育成に乗り出している。
日本人社員の育成やグローバルな人材交流を通じ、海外の経営体制を強化する狙いだ。
ここ数年の大型M&A(合併・買収)で海外事業の重要性が増している。
生損保は銀行に比べて海外展開が遅かったが、人材育成を急いで買収効果を得られるようにする。
日本生命保険は2030年度までに、出資・買収先の経営を管理・支援する「グローバル人材」を計1000人育成する。
このうち100人は出資・買収先の経営幹部の候補生として育てる。
17年度からは傘下の豪MLCなどに経営幹部の候補生を2年間派遣するプログラムを始めた。
今後は17年度に出資した米運用大手TCWなどにも派遣先を広げる。
海外の業務が急拡大するなかで、グローバルに通用する人材育成を急ぐ。
第一生命ホールディングス(HD)は18年度から出資先に派遣した海外人材のフォローアップに乗り出す。
語学や実務能力など苦手な分野を調べ、弱点を克服する研修を導入する。
海外で活躍が期待できる課長級から選抜した人材については、グローバル経営やM&Aを学ぶ社内講座を継続する。
損保ではMS&ADインシュアランスグループHDが、足元で1000人超の海外人員を21年度末をメドに1350人まで増やす方針だ。
人事制度の改革に踏み込むのがSOMPOHDだ。
今年から欧米や中国の海外約10社・4000人の人事評価制度を統一した。
中核子会社のSOMPOインターナショナルHD(旧エンデュランス)も制度の統一に向けて協議している。
出身会社や国籍にかかわらず、横断的に海外人材を配置する体制とする。
職歴や人事評価を一元管理できるシステムも導入して経営の透明性を高める。
一連の改革をテコに、20年代前半に純利益に占める海外比率を3割強と現行の1割強から高めていく計画だ。
こうした取り組みで先行しているのが東京海上HDだ。
M&Aによる海外進出が2000年代初頭と早く、12年度には「グローバル人材戦略」を策定した。
海外の経営を担う幹部候補生を育成するとともに、経営に参画する現地の社員の研修も充実させた。
保険各社は少子高齢化に伴い、中長期では国内の保険業務が縮小するとの危機感が強い。
グローバル人材の育成で、巨費を投じた海外のM&Aから着実な成果を得たい考えだ。
(日本経済新聞 2018/04/24)