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大手生命保険6社が団体年金を管理する事業を統合する。
各社とも競い合う必要がない「非競争領域」と位置づけ、集約に伴う経費削減を優先する。
今後、働き手の減少による企業からの受託先細りをにらみ、成長分野に経営資源を振り向けて契約者に最大限還元できる環境をつくる。
低金利の長期化は金融機関の収益基盤に影響しており、系列を超えた業界内の機能再編が広がる可能性がある。
日本生命保険、第一生命保険、住友生命保険、明治安田生命保険、三井生命保険、富国生命保険の6社が本格的な協議に入ることを近く確認する。
2023年度の統合完了を目指す。
日本生命と第一生命が折半出資している「企業年金ビジネスサービス」を存続会社とし、約5年をかけて段階的に事業を移す。
住友生命や明治安田生命など生保4社が出資する「日本企業年金サービス」は、移管後に清算する。
従業員の雇用は維持する方針だ。
生命保険協会によると、確定給付の企業年金や厚生年金基金で、生保の受託割合は16年度時点で約69%(件数ベース)だが、管理業務にかかるコスト負担が各社共通の課題だった。
高齢化や公的年金への不安も背景にいわゆる「私的年金」の重要性が高まる状況に備え、業務のスリム化が欠かせなくなっていた。
また日銀のマイナス金利政策に伴い、金融機関の収益環境は厳しさを増す。
稼げる部門とそうでない部門を選別し、非競争領域ではできる限り事業を統合、コスト削減につなげる。
具体案は今後詰めるが、年金管理事業はシステムや契約者の管理事務などを集約する方向だ。
運用の機能は各社に残す。
生保各社は低金利で国債での運用が厳しくなるなか、受託した年金など資産運用の高度化を進めており、中核的な業務に資金や人材を戦略的に投じやすくする。
高度化で資産を増やすことができれば契約者利益にもつながる。
こうした流れは生保に限らず銀行、信託銀行に広がる可能性が高い。
すでに信託業界では、企業年金の事務代行に加え、株主名簿の管理を担う証券代行でも協業の分野が広がる。
業界内で共通化できる分野と競い合う分野を区別し、「共通部分で協力し合うことも選択肢となる」(大手行幹部)。
(日本経済新聞 2018/03/22)