生保、当面は慎重運用

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利上げ局面にある米金融政策や米中貿易戦争の行方などが読みにくく、金融市場の先行き不透明感は強まっている。

難しい運用環境が続くなかで機関投資家はどう動くのか。

日本生命保険の戸田和秀取締役執行役員と第一生命保険の宮田康弘執行役員に今後の市場環境の見通しや運用方針を聞いたところ、当面は慎重姿勢を維持する考えを示した。

いずれも各社の運用担当役員を務める。

日本生命の戸田氏は、世界景気について「足元は踊り場にあるが、米国をけん引役に拡大基調は続く」との見通しを示す。

米連邦準備理事会(FRB)の利上げによるドル高を支えに「19年度はさらに円安が進む」と予想。

輸出企業などを中心に「19年度の企業業績は18年度よりも成長が加速する」とみる。

ただ、今後の日本株への投資方針に関して戸田氏は「運用資産に占める比率は足元で15%程度で、ここから大きく買い増したりはしない」との考えを述べた。

日本株は海外のリスクに左右される局面が続く。「米中通商問題は長期化しそうで、企業業績やファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に与える影響は不透明」だという。

その上で戸田氏は「今後成長が見込めるIT(情報技術)や設備投資など、人手不足対応の業種への入れ替えなどを考えていく」方針だという。

第一生命の宮田氏は「20年以降は世界経済は減速する」と指摘。

「米利上げが最大のテーマで、資産の流動性と質を最も重視する」とし、投資先を厳選する方針を示した。

米利上げで、日米の金利格差が広がっている。こうした環境下で宮田氏は、債券では米国債、株式は米国株と日本株を中心に運用する考えを示した。

「日米の金利差が3%になると、為替リスクを取りながらでも米国債へ投資できる水準」とみている。

金利上昇で借り入れコストは増加するが、流動性が高い米国債、米社債は投資対象として魅力的だという。

米長期金利は19年夏ごろまでに3.3~3.5%程度まで上昇するとみている。

宮田氏は、当面の日本株相場については下落リスクを警戒する。

中国ではすでに景気減速の兆候がみられ、日本の工作機械受注や設備投資にも影響が出ている。

「景況感の悪化が意識されれば、日経平均株価は一時的に2万円を下回る場面もある」とみる。

目先の日本株を取り巻く環境は、欧米などの海外リスクが左右するとの見方で一致する。

イタリアの財政リスクやブレグジット(英国のEU離脱問題)などの動向をにらみ、日本株は19年春ごろまでは不安定な状況が続くことが考えられる。

ただ、いずれも相場の下落基調が長期化するとはみていないようだ。

戸田氏は「日本経済の拡大基調は続くとみており、日本株のPER(株価収益率)は13倍程度の水準で割高感は強くない。

欧州などの海外リスクが市場の想定内に収まるようなら、19年春以降に日本株は上昇基調に入る」と指摘。

3月末時点の日経平均は2万4000円を予想する。

(日本経済新聞 2018/11/28)

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