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楽天は野村ホールディングス傘下の損害保険会社、朝日火災海上保険を買収する。
400億~500億円を投じ、今夏をメドに完全子会社化する。
楽天が持つITや9000万人超の顧客データを生かし、新しい保険商品を開発する。
金融とITを組み合わせた「フィンテック」の普及で、膨大な消費者データを持つネット企業が金融業界の一翼を担いつつある。
楽天は2013年に生命保険事業に参入。
今回の買収で生損保を手掛ける体制になる。
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年度内にも野村HDや野村不動産が所有する朝日火災の株式を取得。個人が所有する残りの株式も含め、18年夏までに100%子会社化を目指す。
00年以降に相次いだ国内損保の再編は新しい段階に入る。朝日火災は1951年に野村証券や当時の大和銀行、第一銀行などが出資して設立した。
17年3月末時点の総資産は3689億円。買収後も既存の契約は維持する。
楽天は銀行やカードなど金融事業を強化している。
9000万人超の会員データを抱えるのが強みで、こうしたデータを活用し、既存の損保と異なる商品を開発する。
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例えばネット通販でベビー用品を購入した家庭には子どもがいるといった具合に、購買履歴から家族構成や生活パターンを予測。
生活様式などに応じ、保険料をきめ細かく設定できるようにする方針だ。
人工知能(AI)を活用した「スマートホーム」向けの火災保険などの開発も検討する。
楽天が展開するネット通販や旅行予約サイトに加盟する企業・施設向けにも商品を提供する。
楽天は民泊事業に参入しており、民泊に使う宿泊施設を提供する事業者向けの火災・家財保険の開発などを想定する。
フィンテックの台頭で、ネット企業が金融業界に相次ぎ参入している。
対話アプリ大手のLINEは資産運用サービスへの参入を発表。
ヤフーもAIを活用して運用する投資信託の販売を始めた。
海外では膨大な顧客データを持つ米アマゾン・ドット・コムや米グーグルも将来的な競争相手になるとして既存の金融機関は警戒を強めている。
これまで銀行や保険会社は年齢や性別といった大まかな顧客属性をもとに商品を開発していた。
ネット企業は購買履歴などを活用し、よりきめ細かく需要に応じることができる。
金融商品の仲介も直接手掛けることで、金融機関の「中抜き」が広がる可能性もある。
(日本経済新聞 2018/01/29)
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