生命保険会社のような長期運用を原則とする投資家にとって、長期国債の流動性の低下は懸念材料だった。
そうした意味で、今回の緩和修正で金利変動にある程度の幅を持たせたことは望ましい。
変動幅の拡大にも中長期的に含みを持たせた。長期国債の金利を市場に委ねていく第一歩だと受け止めている。
一方で、生命保険は平均契約期間が20年と長い。
このため20年、30年といった長期ゾーンの金利が現状のままでは、長期国債のみで顧客に対して約束した利回りを確保することは難しい。つ
まり保険会社が抱える負債とのマッチングが困難だ。
生保は個人年金や企業年金など、公的年金を補う商品を扱っている。
だが現状では円建ての魅力的な商品を供給しにくい。
円建ての個人年金では契約時に約束する利回りが1%を超えないと顧客に魅力的とは映らない。
企業年金も同様だ。現在、国内の企業年金市場は約80兆円規模で、うち半分をリスク性資産、残り半分ほどを国債などで運用している。
平均予定利率は2.5%程度、平均運用期間は約15年間だ。
足元は国内外の経済や企業業績が堅調で、株価が大きく上昇したことに支えられている。
だが低金利が続けばいずれ企業年金の運用や個人の資産形成にも影響が出て、老後の保障という意味で保険会社の役割を果たせなくなりかねない。
2019年秋には消費増税も控え、金融政策のかじ取りはますます難しくなるだろう。
日銀にはある程度、景況感が安定している今のうちに金利変動幅を広げるなどの方向感を示していただきたい。
(日本経済新聞 2018/08/21)