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第一生命保険、富国生命保険など生命保険各社で、長寿化に伴う利益を契約者に還元する動きが広がっている。
既存の死亡保険などの契約者には配当を増やす。
対象となる件数は少なくとも1500万人分を超える見通し。
一方、新規の契約者には保険料下げなどで還元する。
保険料算定の基準となる死亡率の低下を受けた措置だ。
金融庁は生保に対し契約者への利益還元を求めており、長寿の恩恵を分け合う。
生保各社は将来の保険金支払いに必要な保険料を、年齢や性別ごとに定めた死亡率を基に算出する。
業界団体の日本アクチュアリー会が4月に、保険料算出の基準となる「標準生命表」を11年ぶりに改定する。
例えば40歳男性の場合、1000人中1・48人とされる年間の死亡率は1・18人に下がる。
死亡率低下は保険会社の利益の押し上げ方向に効くため、増配で契約者に還元する。
第一生命は、死亡保障付きの定期保険の契約者など433万件を対象に75億円分を利益還元する考えだ。
配当が出るタイプの契約の約4割にあたる。
一方、低金利で今後も運用難が続く個人年金など145万件分は74億円の減配を予定しており、全体の配当額は前年並みとなる見通しだ。
富国生命は6年連続で増配する方針だ。
111万件を対象に、34億円を増配。年齢や契約内容に応じて異なるが、1件あたりの受取額は平均で約3000円増える見通しだ。
富国は死亡率の低下分を毎年還元している。
すでに日本生命保険と明治安田生命保険が過去最大規模の増配実施の方針を決定。
日生は有配当契約の約7割に相当する700万件を対象に、300億円を増配。
明治安田は300万件を対象に70億円を還元する。
増配の対象は現在明らかになった分だけで1500万人規模に上る見通し。
大手生保の住友生命保険も増配を検討中で今後、他社の追随でさらに増えそうだ。
各社が見直し後の配当を支払うのは2018年度中となる。
保険各社は既契約者だけでなく、新規契約者にも利益還元を広げる。
多いのは、死亡保険の保険料引き下げだ。
4月に一律で引き下げる日生や富国は、年齢や性別に応じて異なるが、保険料を最大2割超下げる見通しだ。
第一は標準生命表の改定対応に加えて、健康診断結果を提出すると最大で2割割り引く新商品を投入する。
明治安田、住友も健康増進型の新商品を投入する。
一方、医療機関で受診する人の比率上昇などを受けて3~5%程度引き上げるとみられた医療保険は、引き上げを見送る生保が多い。
各社売れ筋の戦略商品であることに加え、昨年4月の予定利率改定時にすでに値上げしたところもあるためだ。
医療保険が主力のオリックス生命保険やメットライフ生命保険などが保険料を据え置く。
第一は入院の発生率などを見直し、主力の終身医療保険で最大5%値下げする。
金融庁は保険会社に対し、適切な利益還元を求めてきた。
昨年10月に公表した金融レポートでも「有配当契約における契約者間での公平な配当」との項目を明記。
保険会社が経営の健全性を保ちつつ、公平性を確保した配当還元を求めている。
(日本経済新聞 2018/03/14)