
目次
生命保険各社にとっての東南アジア市場の重要度が増している。
中間所得層の増加や規制の緩和で保険市場の拡大が続いており、各社は子会社の設立や現地企業への出資を通じて成長取り込みに懸命だ。人材育成のノウハウを伝えるなど、成長を後押しする取り組みにも力を入れている。
第一生命ホールディングスは今年3月、日系生保で初めてカンボジアに100%子会社を設立した。
今年度中の生保事業開始を目指しており、販売ルートの開拓などに取り組んでいる。昨年3月には、外資開放前のミャンマーに現地事務所を開設。現地に合ったビジネスモデルの検討を進めている。
同社が2007年に開設したベトナムの子会社は、17年までの10年間でシェアを約2倍の12%に伸ばした。カンボジア、ミャンマーは保険の普及が始まったばかりだが、ベトナムで蓄積した商品やシステムなどのノウハウを「横展開」する方針で、「メコン地域は10~20年スパンでの利益成長を目指している」と長期的視野での事業拡大を見込んでいる。
他の生保各社も、現地生保に2~4割程度出資し、出資比率に応じた収益の取り込みと市場動向の把握に取り組んでいる。
日本生命保険は、14年に約2割出資したインドネシアの保険大手「セクイスライフ」に営業管理などのノウハウを提供しており、出資後の同社の収入保険料は年平均10%程度伸びた。昨年12月には日生の仲立ちで、セ社と三井物産子会社が二輪バイクのローン契約者向け小口保険を開発。約5000件を販売した。今年11月には、海外グループのトップを一堂に集めた初のフォーラムを東京で開催。グループ企業間で国境をまたいだノウハウ移転などの連携も進めている。
住友生命保険も14年に出資したインドネシアの生保会社にシステム開発やリスク管理のノウハウを提供し、17年度の収入保険料が前年度比23%増加した。明治安田生命保険もインドネシアやタイで現地生保に出資しており「長期的視野で成長を取り込みたい」と話す。太陽生命保険は昨年、市場開放に備えた関係作りの一環でミャンマーの現地企業と合弁でシステム開発会社を設立した。
第一生命によると、アジア太平洋地域における新興国保険市場の規模は、05年からの10年間で年平均15%拡大しているという。早稲田大の中出哲教授(保険制度論)は「生産年齢人口が増えることで、東南アジアの保険需要は急速に伸びている。それぞれの国の文化や暮らしを踏まえた魅力ある商品を提供できるかどうかが成長のカギを握るだろう」と指摘する。
「若い世代多く、伸びが期待」インドネシア生保大手CEO
日本生命保険が出資するインドネシア生保大手「セクイスライフ」のタタン・ウィジャジャ最高経営責任者(CEO、55歳)に、同国の保険市場の特徴などを聞いた。
日本とインドネシアの生保市場の違いは何ですか。
日本では保険は必要とされているが、インドネシアでは必ずしも必要と思われていない。加入者は富裕層が多く、低所得者層の加入率はまだまだ低い。ただしインドネシアは若い世代がボリュームゾーンになっており、今後大きな伸びが期待できる。
どんな商品が主流なのですか。
資産運用目的での保険購入が主流だ。(病気などへの備えは)低所得者層は公的保険を利用し、富裕層は自費で賄う人が多い。
販売面での日本との違いは?
銀行窓販が台頭してきているが、まだエージェントチャンネル(個人代理店)が強い。元々セクイスライフは優れた販売員の育成システムを持っているが、日生のノウハウも組み合わせ、新たな活動管理システムを開発した。保険販売員を育てるシステムは日本よりも進んでいると自負している。
(毎日新聞 2018/12/13)