
目次
大規模災害に備えたリスク分散を目的に、生損保などが基幹業務の一部を相次いで地方に移転している。
東京など大都市圏と比べ人材が確保しやすい点も企業には魅力で、コールセンターの拠点増強の動きが目立つ長崎市では行政の手厚い誘致策も奏功し、地域活性化に期待が高まっている。
■コールセンター拡充
「長崎は戦略的に極めて重要。採用を増やす」。
外資系のチューリッヒ保険の西浦正親日本代表は8日、コールセンターや自動車保険の査定支払いなどの業務を担う長崎市の新オフィス開所式で、拡充を図る姿勢を鮮明にした。
2015年2月に開設したコールセンターは約140人収容可能だが、これを250人が働けるオフィスに移す。
毎年30~40人を採用し、数年かけ収容人数を満たすという。
同席した長崎県の中村法道知事も「県の最大の課題は若い世代の人口減少。
対策に弾みがつく」と話した。
長崎県の17年平均の有効求人倍率は1.18で全国を0.32ポイント下回る。
長崎労働局によると、コールセンター業務などに当たる一般事務員の求職者数は求人数を大きく上回る状況だ。
大学・短大数が比較的多く、採用しやすい環境も拠点増強を後押ししたとみられる。
■札幌や仙台、長崎…
企業の機能移転をめぐっては、外資系のアクサ生命保険が本社機能の一部を札幌市に移転したほか、アメリカンファミリー生命保険も18年4月に仙台市にコールセンター開設を計画する。
長崎でもオリックス生命保険が既にコールセンターや保険金支払い業務などを移し、20年3月末までに約400人に拡充予定だ。
このほか経営コンサルティング会社などにも熊本へ本社機能を移すといった動きも出ている。
一方、受け入れる地方側の誘致競争は激化している。
これまで沖縄県や北海道などでコールセンターの集積が目立っていたが、人手不足などで勢いに陰りも見える。
沖縄県の担当者は「最近は人手不足を感じる」と話すほか、北海道は「札幌市内のオフィスビルはほぼ満室。
まとまった場所を確保するのは簡単でない」(担当者)と分析する。
■通信費や賃貸料負担
長崎県と長崎市は、立地協定の締結などを条件に、通信費や賃貸料をそれぞれ半額負担したり、1人当たり30万円を補助したりする制度を用意。
企業担当者の大学訪問の日程調整といった採用活動支援にも力を入れる。
長崎市では13年以降、生損保会社を中心に計15社が県などの補助金を受け、計約2600人の雇用効果があるという。
県などでつくる長崎県産業振興財団の清田純グループ長は「十分な人材が集まらず雇用計画を満たせないと、企業は長崎以外の地域に目を向ける。
県としては雇用の受け皿を増やしたい」と話した。
(フジサンケイビジネスアイ 2018/02/19)