「節税保険」再ブーム過熱 日生の「発明」、国税庁は想定外

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「保険料を経費として計上できます。課税されず、必要なときに解約すればお金が戻ってきます」。

埼玉の経営者男性(39)の元には、決算月の1~2カ月前になるとそんな保険商品の売り込みが頻繁に来る。

その商品は法人定期保険。

主に中小企業の経営者が入る死亡保険だ。

保険料は年間数百万円と高額で、経営者が死亡すれば数億円の保険金が支払われる。

毎年の保険料は全額経費扱いになって節税になり、途中解約すると支払い済みの保険料の多くが「返戻金」として戻ってくる。

戻ったタイミングで役員退職金や設備投資資金に使えば、返戻金にも課税されない形になる。

男性は「保険というより、節税的なテクニックだ」という。

同様の商品は以前からあり、販売現場では「節税」がPRされてきた。

ただ、中途解約が前提のような商品は保険の趣旨を逸脱しているとも指摘され、国税庁が保険料の経費算入割合を制限するなどしたため、販売は落ち着いていた。

それが昨春から「節税保険」の再ブームが起きた。

きっかけは、生命保険最大手の日本生命保険が昨年4月に発売した死亡定期保険「プラチナフェニックス」だ。

保険料が全額経費に計上できる点が注目され、異例のヒットになった。

既存の死亡定期保険では、保険期間後期の死亡保障額を増やすタイプがあった。

保険料は全期間で平準化するため、死亡保障額が少ない前期も保険料が高めだ。

加入後に高めの保険料支払いで節税し、しばらくして中途解約すれば、支払い済みの保険料の多くが返戻金として得られる。

ただ後期に死亡保障額を多くする仕組みの保険は、国税庁の通達で保険料の全額経費算入ができなくなった。

一方、日生の新商品は保険期間を通じて死亡保障額が変わらない。

ただ保険期間の前期は「保障範囲」が狭く、後期は広い。保険料は平準化され、前期の保険料が高めだ。

このタイプなら国税庁の通達に触れず、保険料を全額経費算入でき、節税メリットが得られる。

同庁は「想定していなかった事態だ」(幹部)という。

日生は「事業承継や保障ニーズに応えた商品」(広報)と税制メリット目的の商品であることを否定する。

だが業界では「近年まれにみる発明だ」(大手生保幹部)との声も上がる。

こうした保険は「プラチナ・タイプ」と呼ばれ、各社が追随した。

市場規模は数千億円以上に膨らんだとされ、保険代理店の税理士は「生保最大手の主導で節税保険の再ブームが来た」。

利益の半分を保険料に充てる企業もあり、この税理士は「さすがに入りすぎでは」と驚いたという。

日生は新商品の販売直前、国税当局には税務上の取り扱いについて確認した、とする説明資料を代理店に示した。

別の生保幹部は「国税当局がお墨付きを与えたかのように、説明資料に明示するのは聞いたことがない」と驚く。

国税庁は朝日新聞の取材に対し、「特定の商品自体の税の取り扱いに確約を与えることはしない」という。

日生は「本当に全額経費扱いになるか代理店から問い合わせが多かったため」(広報)と説明し、すでに資料から文言を削除している。

その後、極端に返戻金が多くなる商品の開発合戦が続き、保険業界を監督する金融庁も座視できなくなった。

今年6月以降、各社に販売実態を問うアンケートを実施。商品設計に問題がないかを繰り返し問いただすケースもあるという。

景気が堅調ななか、こうした保険の販売は中小企業向けに今なお好調だという。「ブーム」はいつまで続くのか。

(朝日新聞 2018/11/14)

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