
金融庁が生命保険業界に一部商品の設計の見直しを求めた
中小企業経営者向けの死亡定期保険を巡り、販売現場で節税効果のPRが過熱している問題で、金融庁が生命保険業界に一部商品の設計の見直しを求めたことがわかった。こうした保険は保険料を経費算入する節税目的での加入が目立ち、一部で「節税メリット」をことさらに強調するような商品が出ている。
関係者によると、11月中旬の金融庁と生保業界の意見交換の場で、金融庁幹部が一部商品について「(商品設計が)合理性や妥当性を欠く」などと指摘。「適切な対応」を求めたという。
「節税保険」は経営者らが高額の保険料を払って加入。
保険料は全額経費に算入し会社の利益を圧縮して節税する。10年ほどで途中解約すれば「解約返戻金」で保険料の多くが戻る。同時に役員退職金の支払いや設備投資をすれば返戻金にも課税されずに済む。
こうした保険は期間の前期は保障範囲が狭く、年齢を重ねた後期は保障範囲が広い。保険料は全期間で平準化され前期は割高な保険料になる。ただ前期での中途解約を前提にすれば、多額の保険料支払いで節税し、解約返戻金で保険料も取り戻せると営業現場で強調されているという。
今回金融庁が問題視したのは、保険料や返戻金が不自然に高く、節税メリットが強調されがちな商品だ。
保険の商品設計は金融庁の認可が必要で、保険料や返戻金を極端に引き上げるのは難しい。そこで一部商品では、営業経費などが含まれる「付加保険料」を後期に多く見積もっていた。付加保険料は金融庁の認可が不要だ。この手法で保険料と返戻金の水準を引き上げ、節税メリットをさらに強調していた。
金融庁は6月以降、各社へのアンケートや聞き取りで実態を調査し、一部の商品を問題視。今回見直しを求めた。
すでに金融庁の調査を受け新商品の発売が延期されたケースもあり、さらに今回の見直し要求で、発売中の商品にも影響が出る可能性がある。
ただ今回金融庁が問題視したのは付加保険料の部分だけで、業界はこの保険自体は問題ないと主張する。昨春、保険料が全額経費に算入できるタイプの商品を発売してブームを起こした日本生命保険の三笠裕司常務は先月の2018年9月中間決算会見で「短期解約を推奨する商品ではない。保障ニーズに応える商品だ」と述べた。
(朝日新聞 2018/12/06)