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金融庁の遠藤俊英長官は日本経済新聞のインタビューで、金融機関のガバナンス(統治)体制の検証に一段と踏み込む考えを示した。
スルガ銀行の不適切融資問題などが念頭にある。
社外取締役や現場の職員らを含めて経営方針が浸透しているかを360度から点検。実態を正確に把握し、ガバナンスの向上を促す。
「営業の現場、支店長や営業職員が経営戦略を実際にどう具体化し、自分たちのものとして実行しているかを確認していく」
金融庁はかねてガバナンスを金融機関経営の根幹と位置づけ、検査・監督で重点的に検証してきた。
遠藤氏は「業態をまたいだ横串を刺す視点として極めて重要」と指摘し、近く公表する2018事務年度の金融行政方針でも「きちんと議論することを強く打ち出す」と語った。
どのようなビジネスモデルをつくり、その方向性について社外取締役を含む取締役会で深く議論しているかを確認する。
遠藤氏は「経営がどのように理念や戦略を確立し、現場に落とし込んでいるか具体的な執行の体制づくりまでみていく」と強調。より踏み込んだ対応をとる考えを示した。
「スルガ銀行の大きな問題が起きているので、自己反省しながらモニタリングの体制を改めて検証する」
ガバナンスの点検で踏み込んだ対応をとるのは不適切な融資が横行していたスルガ銀問題も背景にある。
同行では経営陣と現場の間に大きな溝があり、必要な情報が経営にあがっていなかった実態が明らかになっている。
こうした事例も教訓に、経営層だけでなく、支店長や職員ら現場レベルが経営方針を理解して実行しているかも聞き取りなどを通じ確かめる。
金融庁はすでに3メガバンクに対して通年検査を実施、経営会議や取締役会の議事録などの提出を受けている。
新たに大手生損保会社に対しても同じ手法で、経営がいま何を議論しているのか、海外M&A(合併・買収)などをどのような議論を経て進めているのか、ガバナンスの実態をつぶさに把握できる体制を整える。
「(地銀)再編は地域の顧客のためになる金融サービスを提供できる組織にするための経営の選択肢の一つだ」
人口減少や超低金利環境の長期化で、地域金融の経営環境は厳しさを増している。
遠藤氏は再編を選択肢の一つとする従来の考えを重ねて強調しつつ「トップが客観的に冷静に自らの状況を判断し、足元だけでなく中長期的にどんな経営理念や戦略を持っているかという中で再編は位置付けられる」と指摘。
あくまで目的を重要視する考えを示した。
(日本経済新聞 2018/09/19)