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睡眠時無呼吸症候群について
睡眠時無呼吸症候群(英語ではSleep Apnea Syndromeと言い、頭文字をとってSASとも呼ばれる)は、寝ている間に呼吸が止まってしまう病気です。
自分ではなかなか気づかないため、多くの潜在患者がいると言われます。
交通事故や労働災害の危険性
SAS患者さんの多くは、メタボリックシンドローム、高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病を発症しています。
これらの病気は放置すると生命の危険を及ぼすこともあり、SASは命に関係している疾患とも言えます。
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SASになると、睡眠中に呼吸停止が繰り返され、体内の酸素が減り、二酸化炭素の量が上昇します。
そうすると身体は酸素不足を補おうと心拍数を上げます。
寝ている間も脳や身体に負担がかかるため、日中の疲れを十分に回復することができません。
それによって、さまざまなリスクを生じることになります。
「無呼吸」とは睡眠中に呼吸が10秒以上停止する状態です。
無呼吸の状態が一晩(7時間)の間に30回以上または1時間に5回以上になると、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
呼吸停止が10秒未満、また呼吸が低下した状態を「低呼吸」と言います。
SAS患者の場合、平均30秒以上、長い場合は2分以上も呼吸が止まることがあるとされています。
SASはなぜ危険?
SASが危険なのは日中強烈な眠気をもよおすため、日常生活で様々な障害が生じるからです。
仕事中の居眠りで労働災害を引き起こすだけでなく、居眠り運転が交通事故の原因にもなります。
酩酊(めいてい)状態の人よりも重症のSAS患者さんの方が、ハンドルの操作ミスが多いと報告されており、重症度が増すほどに交通事故の発生率は高くなります。
合併症の併発
肥満の程度によらず、内臓脂肪が増え首回りに余分な脂肪が付くことは、SASの大きな要因の一つです。
日本国内の研究では、SAS患者さんの6割から7割は肥満症であると報告されています。
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上気道の閉塞が最も起きやすい部位は、口の奥、口を大きく開けた時に見える中咽頭です。
この部分が、舌の形状異常で舌根部により塞がれてしまいます。
扁桃腺の肥大や、鼻腔の奥の上咽頭にあるアデノイドと呼ばれる箇所の肥大が原因のことがあります。
子どものSAS原因では一番多く、逆に大人ではあまりいません。
SASの分類で最も多いのが、上気道(空気の通り道)が塞がるが狭くなることにより起きる「閉塞型無呼吸症候群」です。
この原因は主に以下のようなものがあります。
小顎症や小下顎症といった骨格異常も原因の一つです。
特に日本人は欧米人に比べて顎が小さいため、少しの体重増加でもSASが発症しやすいと言われています。
さらに戦後、食の西洋化が進んだことで噛む回数が減り、顎の発達が不十分な日本人が増えたことも大きいでしょう。
上気道を構成している筋力が低下し、睡眠中に弛むことで気道が狭くなり、いびきを発生させることがあります。
主に加齢による筋肉量の低下が原因ですが、肥満や過度の飲酒、喫煙、ストレスによることもあります。
鼻炎の人はSASになりやすいと言われます。
鼻がつまり睡眠中に口呼吸になると、口が開き、舌が咽の奥に落ちて気道が狭くなるからです。
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いびきの他にも、寝ている間に息苦しさを感じる、寝汗をかく、何度も目が覚めるという症状があります。
起きた時に身体や頭が重く、すっきりせず、日中も倦怠感があり、集中力が続かず、突然強い眠気に襲われます。
無呼吸症状は一晩に何回も繰り返されているので、寝ているつもりでもほとんど寝ていない状態になります。
そのため、無自覚でも睡眠不足に陥っているのです。
SASの原因は?どんな人がなりやすい?
肥満症
舌の形状異常
扁桃腺肥大・アデノイド肥大
顎や顔の形状
気道の筋力低下
鼻炎
SAS(睡眠時無呼吸症候群)は寝ている間に呼吸停止が起きるので、自覚することが難しく、診断が遅れることもあります。
家族にいびきを指摘されたり、睡眠時間が十分なのに日中眠気がある人は、いちど健康相談窓口に相談してみることおすすめします。
治療法や予防法は?
軽度の人は歯科装具を用いる治療法が一般的です。
睡眠中に気道が開きやすいよう、マウスピースで下顎を少し突き出すような状態に固定します。
UPPP(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)という方法は、扁桃などを切除し上気道を拡大します。
これは誰もが行えるわけではなく、手術によって飲み物が鼻に逆流しやすくなるなどの問題が起こることもあるため、医師の判断のもと治療を選択して下さい。
CPAP(シーパップ・経鼻的持続陽圧呼吸療法)と呼ばれる治療法は、圧力を加えた空気を鼻から送り込み、強制的に狭まった気道を広げ呼吸を確保する方法です。
SASの対処法について。治療法や予防法は?
肥満の解消
肥満症は大きな原因ですので、自覚している人はダイエットを心がけることが大切です。
ダイエットはSAS以外の生活習慣病の改善にもつながりますので、早期に取り組みましょう。
飲酒と喫煙を控える
飲酒と喫煙はSASを悪化させる原因になります。
さらに飲酒によって喉がむくみ、気道が狭くなりやすくなります。
飲酒後に大きないびきをかきやすい人は、SASの傾向があります。
仰向け以外で寝る
鼻呼吸の習慣を仰向けになって寝ることで気道が狭くなります。
気道を確保できる態勢で睡眠をとるよう、抱き枕などを利用して横向きやうつぶせ寝を試してみましょう。
SAS患者の人は口呼吸をしている場合がほとんどと言われます。
本来、人間は鼻で呼吸する作りになっています。
睡眠時の口呼吸は口の中が乾き、さらに気道が狭くなりいびきが大きくなります。
鼻呼吸は普段の習慣からですので、「口がいつの間にか開いていることが多い」など自覚があれば意識しましょう。
参考図書・WEBサイト:
『ほんとうは怖い「いびき」の話』 舛谷仁丸 (impress QuickBooks)
『図解 睡眠時無呼吸症候群を治す!最新治療と正しい知識』白濱龍太郎(日東書院本社)
睡眠時無呼吸なおそう.com http://659naoso.com/sas(帝人在宅医療株式会社)
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