
目次
それぞれの特徴は?
腫瘍
腫瘍とは、できもの一般を指します。指にできるイボも腫瘍ですし、肉腫、ポリープ、悪性リンパ腫も腫瘍です。
通常、体の細胞は「節度」を持って生きており、増殖して数を増やしたり大きくなったりすることはなく、それぞれの組織に必要とされるだけの速度で増殖し、不要になった細胞は死んでいきます。
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そういった節度は、細胞の持つ遺伝子がプログラムしたルールによって作り出されています。また、細胞はあるべき場所に留まり、やたらと違う場所に移動することはありません。
例えば皮膚の細胞は、皮膚の奥にある幹細胞(かんさいぼう)と呼ばれるおおもとの細胞が増殖して皮膚の表面に移動していき、1カ月ほどで皮膚の表面に到達し、押し出された細胞は剥がれ落ちて消えていきます。
しかし、その節度が失われ、異常に速く増殖したり、細胞のサイズが急激に大きくなると、盛り上がって固まりを作り、腫瘍化します。これは、細胞の遺伝子に間違いが起こり、節度を保つために必要なシステムが壊れてしまったことによります。
例外として、頭蓋骨の中にある腫瘍(脳腫瘍や髄膜腫)は、スペースは限られているために、良性であっても大きくなりすぎると正常な脳を押しのけて命に係わることがあります。
その他、外見上の問題があったり、何らかの悪影響を及ぼすものは治療の対象になります。
腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があります。良性腫瘍は、節度を保っており、命を奪うほどのことにはならず、別の場所にまで移動(転移)しません。
それに対し悪性腫瘍は、完全に節度を失って暴走しており、周囲の状況を無視して増殖を繰り返し、急速に大きくなったり、血流やリンパ流に乗って関係のない臓器にまで漂っていき、その場で固まりを作っていく(転移する)ことで最終的には命を奪うという特徴があります。
肉腫
人間の体の細胞は、外界に触れる部分、臓器の表面を覆っている上皮細胞と、それ以外に分けられます。皮膚、口やのどの粘膜、胃や腸の内側を覆う粘膜などが上皮細胞の例です。
上皮細胞は外界の様々な物質に接して傷つくことが多いため、使い捨てのようになっており、頻繁に新しい細胞と入れ替わっています。そのため増殖の回数が多く、増殖に関する節度を保つための遺伝子が壊れやすくなっており、腫瘍が発生する頻度も高くなっています。
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それに対し、上皮ではない細胞(骨、脂肪、筋肉、血管など)は、頻繁に作り変える必要がないため、増殖の回数が少なく、遺伝子が壊れることが少なく、腫瘍化する頻度は少ないと言えます。
こういった上皮ではない細胞が腫瘍化したものを肉腫と言います。例えば、骨のがんである骨肉腫、子宮の壁の筋肉のがんである子宮肉腫などです。
ポリープ
粘膜で覆われたイボで、管状の臓器の内腔に発生したものを言います。大腸の内側に生じた大腸ポリープ、声を出す声帯に生えた声帯ポリープ、鼻の穴の中に生えた鼻茸などが代表的です。
ポリープの中には、がんに変化していったり、がんと見分けがつかないこともあり、特に大腸のポリープで問題になります。そのため大腸内視鏡検査でポリープが見つかると、切り取って顕微鏡で見て(病理検査)、細胞の形から良性か悪性(がん)かを調べます。
異形成
異形成とは、細胞が異常な状態になっていることを言い、がん細胞ほどではないものの、正常とは言えない特徴を持つ細胞がある場合を指します。
がん細胞は節度を失って増殖しているため、大きさがバラバラだったり、遺伝子の入っている核が大きかったりと、細胞一つひとつの様子が正常時と大きく異なります。
体のどの部分についても異形成はあり得ますが、子宮頸がん検診で子宮頸部の細胞をこすり取ったものを観察した場合や、血液のがんで血液中の細胞を見た場合に「異形成」という診断が下されることが多いです。
異形成とがんははっきりと分けられるものではなく、グレーゾーンのものです。子宮頸がんの場合、異形成であっても程度によってはがんと同じ治療を行います。
悪性リンパ腫
リンパ球は免疫機能を担っている細胞で、白血球の一種です。リンパ球は血液中に流れているだけではなく、全身のリンパ節にあり、様々な臓器に移動して、病原体や異物に対する免疫を担当しています。
このリンパ球が節度を失って増殖し、がんになることがあります。がん化したリンパ球がリンパ節や皮膚など、血管以外の臓器にとどまって固まりを作っている場合を、悪性リンパ腫と呼びます。
それに対し、血液中を巡回しているリンパ球ががんになったものをリンパ性白血病と言います。
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いずれについても、細胞の増殖や消失を制御し、節度を持たせ、秩序を保つために必要な遺伝子が壊れてしまい、細胞が暴走して好き勝手に増殖する ようになることが原因です。
なぜ遺伝子が壊れたかということについては、 生まれつき遺伝子の配列が間違っていた場合もありますし、放射線・紫外線・化学物質などの影響で配列が変わってしまう場合もあります。
特に原因はなく、偶然そうなってしまったということもあります。
発見方法とは?
腫瘍
乳がん、皮膚がん、精巣がん、口腔がんのように体の表面に近い場合は、自分でしこりを見つけて発見できることもあります。腫瘍から血が出る場合、痰に血が混じる(肺がん)、便に血が混じる(大腸がん)ことで分かることもあります。
腫瘍が大きくなると、周囲を圧迫するために症状が出て気づくこともあります。食道がんの場合は、飲み込みづらくなり、胆のうがんや膵がんの場合は、消化液が出ないために黄疸や下痢になり、脳腫瘍や脊髄腫瘍の場合は、しびれや麻痺が出ます。
腫瘍がホルモンを放出することで、体の機能が異常(脳の下垂体腫瘍や副腎・卵巣の腫瘍など)になって気づくこともあります。がんが大きくなることで臓器本来の機能が損なわれて気づくこともあります。
血液のがんである白血病では、血液の機能である酸素運搬・止血・免疫機能が異常になり、貧血、血が止まらない、感染しやすい状態となります。
症状が出にくいがんは、内視鏡検査やレントゲンなど画像検査で判明します。
胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、肺がんは、検診による死亡率の減少が認められており、市民向けの検診や、一般的ながん検診の対象となっています。
全身の多くのがんを一度に見つけられる検査として、FDG-PETがあり、健康診断のメニューにPET検診をあげている健診センターもありますが、10万円程度と高額であり、PETでは見つけにくいがんもあるという問題点もあります。
肉腫
骨肉腫では骨が弱くなることで痛みを自覚したり、レントゲン写真で発見されます。
ポリープ
大腸ポリープは大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で、声帯ポリープは耳鼻科で使用する反射鏡で観察することができます。
異形成
細胞を実際に取り、顕微鏡で観察することで異形成と判断されますので、血液のがんにおける異形成は採血で見つかります。子宮頸部の異形成は、子宮がん検診で見つかります。
悪性リンパ腫
リンパ節や皮膚の下にあるしこりを自分で見つけたり、画像検査で固まりを見つけることで発見されます。
がんが進行する段階で、微熱、発汗、体重減少などが現れるので、そういった症状をきっかけに見つかることもあります。
それぞれのリスクや気をつける点は?
遺伝子配列を書き換える力を持つ紫外線、放射線、化学物質(発がん性物質)、ウイルス感染や、組織を損傷するような刺激(食道がんであれば、高熱の飲食物によって食道粘膜が傷つくこと)はすべてに共通するリスクです。
特徴的なリスク因子としては、例えば胃がんはピロリ菌感染や塩分の多い食事、大腸がんは便秘、子宮頸がんはウイルス感染(HPV)、肝臓がんはB型肝炎やC型肝炎ウイルスの感染などが知られています。
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